DX推進の第一歩を踏み出す中小企業の皆様へ ~IPA「2024年版DX推進指標分析レポート」から見えた現実と希望~

これからDXに取り組んでいきたい、でも何から手をつければいいか分からない、そんな悩みを抱えていませんか? 中小企業の皆様にとって、DXは未来への投資でありながら、人材や資金、時間の制約の中でどう進めるか悩ましい課題かもしれません。そんな皆様にとって大変参考になるレポートがIPA(独立行政法人情報処理推進機構)から公開されました。「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2024年版)」です。
このレポートは多くの日本企業が「DX推進指標」を使って自己診断した結果を分析したもので、日本全体の企業のDXの「いま」を知ることができる貴重な情報源です。今回は、このレポートから見えてきた中小企業のDXの現状と、これからDXに着手する皆様へのヒントを、ブログ記事としてご紹介します。
DX推進指標とは?
まず、IPAが提供する「DX推進指標」について簡単にご説明します。これは、企業がDX推進の現状や課題を認識し、経営層や関係者間で認識を共有してアクションにつなげるための「自己診断」ツールです。自己診断では「DX推進のための経営のあり方、仕組み」と「DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築」という2つの大きな柱のもと、合計35項目について現状と3年後の目標を評価します。自己診断を通じて、自社の強みや弱み、あるべき姿とのギャップを把握できます。
IPAはこの自己診断結果を収集・分析し、ベンチマーキングデータとして提供しています。これにより、業界での自社の立ち位置を知ることができ、次に取るべき具体的なアクションを考える上で非常に役立ちます。
2024年版レポートで分かったDXの現実
2024年版レポートでは1,349件の自己診断データが分析対象となりました。注目すべきは、このうち約7割が中小企業だった点です。レポートから見えてきた日本の企業全体の、そして中小企業のDXの現状はどうだったのでしょうか。
多くの企業がまだDX推進の初期段階
分析の結果、全企業におけるDX推進の成熟度は「レベル0(未着手)からレベル2未満(一部での戦略的実施)」に偏っており、全体の約6割を占めていることが分かりました。「レベル4以上(全社戦略に基づく持続的実施、またはグローバル市場で勝ち抜けるデジタル企業)」の企業はわずか1%と非常に少ない状況です。 これは、「全社戦略に基づいてDXを継続的に実行できている企業は少なく、多くの企業ではまだ部門単位での散発的な取り組みに留まっている」という現実を示しています。
目標達成に向けて特に課題と感じている点
「現状(現在値)」と「3年後の目標値」とのギャップが大きい、つまり企業が目標達成に向けて特に課題を感じている指標として以下の点が挙げられています。
- マインドセット・企業文化:DXに適したKPIを設定し、それに基づいて評価を行う仕組みを構築し、従業員の行動変容につなげていくことに難しさを感じている企業が多いようです。
- IT投資の評価:IT投資がどの程度ビジネス価値に貢献しているかを評価する仕組みの構築に課題を抱える企業が多数あります。これは、マインドセットや企業文化といったソフト面の課題と密接に関係していると考えられます。
取り組みが比較的進んでいる点
一方で、比較的目標とのギャップが小さい、つまり企業の取り組みが進んでいる、あるいは既に意識が高いと考えられる点としては、以下の点が挙げられています。
- 事業への落とし込み:経営者自らがリーダーシップを発揮し、事業ニーズに基づいた DX 推進に取り組んでいる企業が多く見られます。
- プライバシー、データセキュリティ:データ活用の基盤として、プライバシー保護やセキュリティに関するルール整備、システム構築が進んでいる企業も一定数存在しています。これは、外部環境の変化やリスクへの意識の高まりが背景にあると考えられます。
これからDXに取り組む中小企業の皆様へ
このレポートから、これからDXに取り組む中小企業の皆様へのメッセージをいくつかお伝えしたいと思います。
「ウチだけじゃない」から安心して始めましょう
日本の多くの企業、特に中小企業はまだDX推進の初期段階にあります。これからDXに取り組もうと考えている皆様は決して遅れているわけではありません。多くの企業が同じように手探りで進めている状況です。まずは一歩を踏み出すことが重要です。
「経営の仕組み」と「ITシステム」を両輪で考えましょう
レポートでは、DX推進には「DXのための経営の仕組み」と「その基盤としてのITシステムの構築」という両方の側面からの取り組みが必要だと強調しています。IT部門に任せきりにせず、経営者自身がITシステムがDXにどう貢献するのかを理解し、事業部門やIT部門と議論しながら、全社的な視点で推進することが不可欠です。
課題は難しい、でも乗り越える道はあります
中小企業が課題と感じている「マインドセット・企業文化」や「IT投資の評価」は確かに難しいテーマです。しかし、多くの企業が共通で直面している課題でもあります。まずは自己診断を通じて自社の現状を客観的に把握し、関係者と認識を共有することから始めましょう。その上で、目標を設定し、次に取るべきアクションを具体化していくことが重要です。
DX推進指標を「道しるべ」として活用しましょう
DX推進指標は自社のDX推進状況を可視化し、関係者間の議論を活性化し、具体的なアクションに繋げ、継続的な進捗管理を行うためのツールです。また、ベンチマーキング機能を使えば、自社と似た規模や業種の他社との比較を通じて次に何に取り組むべきかのヒントが得られます。これからDXに着手する中小企業の皆様にとって、自社の立ち位置を知り具体的な取り組みを始めるための強力なサポートツールとなります。
まずは自己診断から始めてみませんか?
「何から手をつければよいか分からない」という悩みをお持ちなら、まずはIPAが提供する「DX推進指標自己診断フォーマット」を使って自社の「健康診断」をから始めてみませんか。その結果を基に分析レポートも参考にしながら、自社のDX推進の第一歩を踏み出してみてください。本記事が、皆様のDX推進の旅の少しでもお役に立てれば幸いです。
IPAの「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2024年版)」に関する詳細やダウンロードについては、IPAのウェブサイトをご参照ください。
(本記事は、IPAが公開した「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2024年版)」および関連資料に基づき作成しています。)
「自己診断も難しそう」と感じている方は、ぜひ「DX学校 秦野校」までご相談ください。