激動の時代を乗り越える中小企業経営のカギは?最新レポートを読み解く

いつもお読みいただきありがとうございます。皆さんの会社では最近特にどのような経営課題に直面されていますか? 原材料費やエネルギー価格の高騰による物価上昇、深刻化する人手不足、あるいは「2024年問題」に代表される働き方の変化などでしょうか。ESG経営やDX(デジタルトランスフォーメーション)、GX(グリーントランスフォーメーション)といった新しい波にも対応していかなくてはなりませんね。まさに中小企業を取り巻く経営環境は厳しさを増していると言えるでしょう。
今回、フォーバルGDXリサーチ研究所が発刊した『BLUE REPORT For Social Value 2025年版』から、こうした激しい変化の時代に中小企業がどのように向き合っているのか、その実態を読み解き、皆さんの経営のヒントになる情報をお届けしたいと思います。

目次

中小企業が直面する主要な課題と取り組み状況

このレポートは全国の中小企業経営者を対象としたアンケート調査に基づいています。物価高、人手不足、ESG経営、次世代戦略、そしてGDX(DXとGX)といった多岐にわたるテーマについて、中小企業の現状や取り組み状況がまとめられています。
調査結果を見ると、多くの中小企業がこれらの課題に対して対策を講じたり、検討したりしている様子がうかがえます。しかし同時に、まだ取り組みが進んでいない、あるいは何から手をつければ良いか分からないといった企業も少なくない実態も浮き彫りになっています。
例えば、身近な課題である物価高については、調査対象企業の76.6%がマイナスの影響を受けていると回答しています。対策としては「価格転嫁」が最も多く実施されていますが、生産性向上やDXによるコスト削減といった対策に高い効果を感じている企業が多いようです。興味深いのは、政府の物価高への対応については、9割以上の経営者が「あまり満足していない」「全く満足していない」と回答している点です。これは、政府の施策に関する情報が中小企業に十分に届いていない可能性も示唆されています。
人手不足も深刻で、全体の54.3%が人手不足を感じています。特に建設業では78.6%と全体の約8割が不足を感じています。この人手不足はコロナ以前から恒常的な課題である一方、コロナ禍を経てさらに深刻化したという声もあります。対策としては、求人・採用強化や給与水準、福利厚生の見直しなどが行われていますが、対策の効果を実感できているのは約5割にとどまっています。
また、近年重要性が叫ばれるESG経営については、「知っている」と回答した企業は34.2%にとどまり、認知度がまだ低い現状が明らかになりました。取り組み状況を見ても、「取り組んでいる」企業は31.8%です。取り組めていない理由としては、「他に優先すべき課題がある」が最も多く挙げられています。

DXとGX、その現状と期待される効果

レポートが特に焦点を当てているテーマの一つが「GDX」、すなわちDXとGXへの対応です。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の認知度は63.3%とGXよりは進んでいますが、取り組み度合いとなると「取り組めていない」企業が37.2%を占めており、まだ道半ばと言えるでしょう。DXに取り組む理由としては「業務効率の向上を図るため」が63.7%と最も多く、コスト削減やデータ活用が続きます。DXに取り組んでいる企業では、90.0%が生産性向上・効率化を実感しており、特にデータ入力・管理や財務・会計といった業務で改善が見られています。また、サプライチェーンの上流企業からDXの取り組みを進めるよう要求を受けたことがある企業は21.1%でした。
一方、GX(グリーントランスフォーメーション)は、認知度が29.4%とDXよりも大幅に低く、取り組み度合いも「取り組めていない」企業が62.9%に上ります。GXに取り組む理由としては「環境負荷の軽減を図るため」が58.7%と最も多く、「企業の持続可能な成長」「企業の社会的責任(CSR)を果たすため」といった理由が続きます。GXの効果を実感できている企業は45.5%とDXより低い傾向があり、これは環境配慮が売上向上などに直結しにくいためと考えられます。サプライチェーンの上流企業からGXに関する要求を受けたことがある企業は8.2%でした。
また、DX/GX推進のための「伴走支援(コンサルティング会社などの活用)」については、DXで56.2%、GXで39.0%の企業が活用しており、実際に活用した企業の8割以上が必要性を感じています。

喫緊の課題と未来への投資

今回のレポートから見えてくるのは、多くの中小企業が物価高や人手不足といった目の前の経営課題に懸命に対応している姿です。一方で、ESGやGDXのような中長期的な視点での経営戦略への取り組みは、まだこれから、という段階にあると言えるでしょう。
特にDXやGXといったデジタルとグリーンの変革は、単なるトレンドではなく、これからの事業継続や成長に不可欠な要素となりつつあります。DXは業務効率化や生産性向上に直結し、多くの企業がその効果を実感しています。これは「稼ぐ力」を高める上で非常に重要です。一方、GXは環境負荷低減が主な目的であり、短期的な効果が見えにくい側面があります。しかし、大手企業を中心にサプライチェーン全体での環境対応が求められる流れは確実に進んでおり、「選ばれる企業」になるためには避けて通れない道となるでしょう。
多くの企業がDXやGX、そして成長戦略の策定に「必要性を感じていない」「何から手をつければ良いか分からない」「対応できる人材がいない」といった課題を抱えています。この現状を打破するためには、外部の知見や支援を積極的に活用することが有効だと、レポートの伴走支援に関する調査結果からも読み取れます。

まとめ:未来へ向けた最初の一歩を

『BLUE REPORT For Social Value 2025年版』は、中小企業が直面する厳しい現実と、変化への対応を模索する姿を正直に伝えてくれています。物価高や人手不足は喫緊の課題ですが、DXやGX、ESG経営、そして次世代への事業承継や成長戦略といったテーマも、企業の「永続する経営」のためには不可欠です。
未来は待ってくれません。まずはレポートを参考に、自社にとって何が最も重要な課題なのかを見極め、できることから情報収集や外部相談も含めた最初の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。政府の補助金や支援制度、そして伴走支援なども活用しながら、着実に歩みを進めていくことが、この激動の時代を乗り越え「選ばれる企業」として輝き続けるためのカギとなるはずです。
このブログ記事が、皆さんの明日からの行動を少しでも後押しできれば幸いです。

※本記事の内容は、フォーバルGDXリサーチ研究所が2025年5月に発行した『BLUE REPORT For Social Value 2025年版』に基づいて構成・要約しています。

フォーバルGDXリサーチ研究所:BLUE REPORT For Social Value 2025年版

目次